はじめましてイタリア #3

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2006.9.3

ミラノの朝はとてもよく晴れていた。

ホテルの窓から見えるミラノの街はとても輝いていて、

思わず窓を開けると、少しひんやりとした心地よい空気が入ってきた。

昨日あれだけイタリアに一人で来てしまったことを後悔していたのに、

ミラノの街を眺めていると、いいことがありそうな気がして、さっそく街へ出てみた。

 

朝のミラノは、暗黒面に満ち溢れた夜のミラノと本当に同じ街なのか、と思うくらい、

静かで幸福に満ちていた。

薄いグレーで統一された街並み、どうやって停めたのか分からないくらい隙間のない縦列駐車、

オレンジ色の路面電車、見慣れない看板、少し臭う空気。

初めてのヨーロッパはなにかもが珍しかった。

まるで夢の中にいるような気分がする一方、ミラノの街にいる自分は異物のように感じられて、

ちょっと油断すると街から弾き出されそうな緊張感もあった。

 

スフォルツェスコ城を見学し、そのあとドゥオモに向かって歩いていると、

後ろから、

「あの、日本の方ですか?」と声をかけられた。

後ろを振り向くと、黄色いサングラスの坊主頭が目に飛び込んできた。

身長も180cm近くあり、身体つきもそこそこがっしりしていた。

あだち充の野球漫画『タッチ』に出てくる柏葉監督の実写版だ…と思った。

正直、最初は日本のヤクザに絡まれたのかと思った。

10年たった今でも、はっきりと覚えているくらいビビった。

「ドゥオモまで行き方分かりますか?」と訊かれ、

ここで今からドゥオモに行くなんて言ったら、一緒に行くことになるよな…と思いつつも、

咄嗟に嘘をつくこともできず、

「あ、今から行くところなんですよ」と答えてしまった。

当然の流れで、

「じゃあ、いっしょに行きましょう」ということになり、

いっしょにドゥオモへ向かうことになった。

柏葉監督はそのヤクザみたいな見た目からは不釣り合いな感じの

控えめで美人な奥様といっしょだった。

これが高橋さん夫婦との出会いだった。

 

 

人見知り&ビビりの僕はなかなか高橋さんに対する警戒心が拭えなかったけど、

そんな気持ちを察してか、高橋さんが、

「見た目こんなんですけど、一応働いてます」と言ってサングラスを取った。

すると、とても優しい目をしていて(しかもまあまあイケメン)、

「住谷正樹(レイザーラモンHG)だ…」と思った。

今でも、高橋さんの正体はHGだったのではないか、と思うほど似ていた。

ドゥオモへ向かう道すがら、いろんな話をした。

高橋さんは4月に結婚したこと。

結婚式のときは髪が長かったこと。

夏が来て暑くなったので、人生で初めて坊主にしたこと。

大阪の京橋に住んでること。(意外と近くに住んでてびっくりした)

青山学院を出たあと、経理の仕事をしながら、税理士を目指していること。

僕が通っていた同志社の近くの釣り堀によく行くこと。

25歳になる弟が何年も留年して、まだ大学生であること。

美人な奥様との馴れ初めも聞いた気がするけど、その話は忘れてしまった。

こんなことを話していると、ドゥオモに着くころには僕の警戒心はすっかり解けた。

解けたどころか、「高橋さん夫婦…大好きだ!」レベルになっていた。

 

20分ほど歩いてドゥオモに着いた。

生まれて初めて見たヨーロッパの教会建築がミラノのドゥオモとなった。

ゴシック建築の堂々としたたたずまい、天に伸びる無数の小尖塔はあまりにも美しく、

このとき初めてイタリアに来てよかったと感動した。

ファサードは修復中でほとんどが青いシートで覆われていたけど、

それでも十分に美しかった。

高橋さん夫婦と一緒にいるのは、とても居心地がよかったけど、

二人の新婚旅行を邪魔してはなるまい、と「では、ここで」と言いかけたときに、

「じゃあ、まずは中にでも入ってみようか」と言われた。

高橋さんがあまりにも自然にそう言ったので、お言葉に甘えることにした。

 

ドゥオモの中に入ると、雰囲気は一変した。

人が何万人入るのだろうかというほどのとてつもなく広く、薄暗い空間に、

これまた見たこともないような太い柱が何本も立っていた。

天井は遥か上にあり、天井に伸びる柱と柱のあいだには、

巨大な宗教画が何枚も飾られていた。

荘厳な空間にパイプオルガンの音色が鳴り響き、神秘さを際立たせていた。

「こ、これは…東大寺大仏殿よりもすごい…」と感動した。

 

ドゥオモの中を小一時間見学したあと、ドゥオモの屋上にも上った。

ミラノの景色を眺めていると、心の底から、

「イタリアに来てよかった!」と思えた。

(しかし、このあと幾多の災難に見舞われ、また日本帰りたいってなるんだけど)

ドゥオモの屋上から降りてくると、ちょうど昼の12時を回ったくらいだった。

高橋さんはこれからミラノ中央駅に向かうと言った。

「もう次の街に行くんですか?」と訊くと、

「いや、見学しに行くだけやねん。せや、一緒に晩御飯食べへん?」と誘われた。

「もちろんです!」と即答し、

18時にガッレリアのクーポラの真下で待ち合わせすることになった。

 

つづく

2016-09-10 | Posted in 18.イタリア旅行記No Comments » 

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